Marginal Man -- 社会学の専門用語としてよく使われる言葉で、境界人、周辺者、などと訳される。2つの異種文化集団の生活の狭間(はざま)に立っていてそのいずれにも一体感を抱けない人間。「文化二重人格者」「局外者」「仲間意識欠如者」などのニュアンスも強い。

「第三部 日本人論からの解放」を読んだ後は目から鱗が落ちた気分になりました。
「日本人に生まれてよかった」と言ったことがある方に、ぜひ読んでいただきたいです。
以下に、私が冷や汗をかいた箇所を引用します。

日本人論の圧倒的多数は、(中略)日本人が他国民には見られない独特な国民性を持っており、日本社会や日本文化はほかの国には観察できない特殊な性質を持っている、と主張してきた。日本人が特殊独特であるかどうかはさておいても、自分たちがユニークだという主張が、絶えず繰り返されているという点において、日本は文字どおりユニークな社会なのである。(Pg. 107)

つまり、日本礼賛論は日本社会のウラ・オモテの両面を描かない。オモテむきのキレイごとの部分だけをつなぎ合わせて、日本人の日常生活の中に毎日あらわれる権力関係の現実を視界から脱落させる。このことは、企業組織や官僚機構の上層部にとっては、とりわけ便利である。自分たちが押しつけている社会の規範が、各個人の欲求の集積のように叙述されれば、こんなに都合のいいことはない。「……しなければならない」とみんなをあやつっている現実を隠して、みんなが「……したい」と思っていると書いてもらえれば、これは支配層にとっては願ってもないことだろう。その意味で、日本礼賛論者は日本の権力エリートの代弁者としての役割を果たしている。(Pgs. 111-112)

今まで、「何かその話、片手落ちのような気がするけど、そんなもんかなぁ。まあ日本人だしね。」と自分を納得させていたけど、納得しちゃいけなかったのです。ずいぶん時間がかかったけど、気づいて良かった!

第五部 個人の国際化への関門
 第十二章 テクノクラートの国際化
 第十三章 ビザ制度の背後にあるもの
 第十四章 レイシズムとの戦い

も大変興味深く読みました。
テクノクラート・エリートの知り合いは何人かいますが、確かにこの本で描写されているようなところがあります。
こんなことに憧れを抱いてもしょうがないと、再確認できて良かったです。

どうしてビザ制度があるか、なんて今まで考えたことなかったです。能天気だな。
ビザ制度の背後にある、大きな権力構造に無関心なまま生きてきていたんですね。反省。

人種差別の問題は、本当に難しい。
留学中に、初めて差別される側の人間となったときの衝撃を、今でも覚えています。
しかし、自分の中に人種差別が全くないかと言うと、ちょっと自信がないです。ないと思いたいです。
人種意識をめぐる問題は、感情論に非常に走りやすいですよね。
"Jap"と呼ばれたときのことや、Pearl Harborを非難されたときのことを思い出すと、頭に血が上ることを考えれば、想像に難くないです。
でも、自分は他人種・他民族に対する寛容度の高い人でありたいと思います。
別に相手に迎合する必要はなくて、自分との違いをacceptして、その違いを楽しめるような人でありたいと思います。

この「日本人をやめる方法」という本は、1990年に第1刷が発行されていて、もう14年も前に書かれたものですが、現在でも十分通用する内容だと思います。
著者である杉本良夫氏の他の著書もおいおい読んでみようと思います。
彼の主張に諸手をあげて賛成!というわけではないですが、共感できる箇所もたくさんあったので・・・。
この本を読んで、毎日「比較」していた大学の頃を思い出しました。